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生活綴方出版部/小さい本屋の小さい小説

¥880 税込

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小さい本屋の小さい小説
かとうひろみ

普段帰りの遅い夫が、珍しくその日は早く帰った。手にはビニール袋を提げている。はい、と渡されて中を覗くと、ビニール袋の中には小さな魚がぎっしり入っている。

「魚、そんなにたくさんどうするの」
「飼おうか」
「だって全部死んでるじゃない」
「じゃあ食べよう」
 そう言った夫の目はたしかにそのとき、ビニール袋の中の魚の目と同じくらい死んでいたのに、私はそれに気づかないふりをしたのだった。

(「タソガレ」冒頭より引用)

我々は生活のなかの違和感に「気づかないふり」をして生きている。違和感がない日が二日もつづくことなど、本当はありえないのだ。だからといって、いちいちそれにかまっていたら、からだがもたない。いつしか我々は違和感に「気づかないふり」をしていた事実を忘れてしまっているのだ。]

という想像を掻き立てる冒頭の短編「タソガレ」を、まずは必読。本屋・生活綴方で12ヶ月連続で無料で配布したショートショート「小さい本屋の小さい小説」12編が一冊に。

小さい本屋の小さい小説
かとうひろみ
880円(税込)

・発行/印刷:生活綴方
・リソグラフ印刷
・52ページ
・企画・レイアウト:中岡祐介(三輪舎)
・装丁/装画:佐々木未来

→かとうひろみ
神奈川県/慶應義塾大学文学部卒業。会社勤務の傍ら、ときどき本屋・生活綴方店番をする。文芸ユニットるるるるん等で小説を発表。「未病」「凶器としてのピータンについて」「コン、コン」

→生活綴方出版部
横浜・妙蓮寺の本屋・生活綴方の出版レーベルです。すべてリソグラフ印刷、人力製本。三輪舎が主宰しています。

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